Topコンテンツライブラリ企業のお客様予知保全とは?CBMとの違い・センサー技術・中小製造業への導入手順
予知保全とは?CBMとの違い・センサー技術・中小製造業への導入手順

予知保全とは?CBMとの違い・センサー技術・中小製造業への導入手順

予知保全とは、IoTセンサーや機械学習・AIを活用して設備の故障を事前に予測し、最適なタイミングで保全を実施する方式(Predictive Maintenance:PdM)です。状態基準保全(CBM)の発展形に位置づけられ、CBMが「現在の状態の異常を検知する」のに対し、予知保全は「将来の故障を予測する」点が異なります。本記事では、予知保全の仕組み・CBMとの違い・中小製造業が段階的に取り組むための導入手順を解説します。

1. 予知保全・CBM・予防保全の比較

方式 トリガー 技術要件 コスト 故障予測精度
TBM(定期保全) カレンダー・稼働時間 低(計画管理のみ) 中(過剰保全リスク)
CBM(状態基準保全) 計測値が閾値を超えた時 中(センサー・計測) 低〜中
予知保全(PdM) AIが故障を確率的に予測 高(AI・大量データ) 高(初期投資)

予知保全の前提としてCBMのデータ蓄積が必要になることが多くあります。まずCBMによる計測記録の仕組みを整えてから、段階的にAIモデルへ発展させることを推奨します。

2. 予知保全で使われる主な技術

技術分類 具体的な手法・ツール 検知できる故障・劣化
振動解析+機械学習 振動センサー+FFT分析+異常スコアリング 軸受の疲労・ミスアライメント・不釣り合い
温度トレンド予測 熱電対・赤外線センサー+回帰モデル 電気系の絶縁劣化・冷却系の詰まり
電流波形分析 電流センサー+モーター診断モデル モーター巻線の劣化・ポンプの性能低下
音響診断 マイクロフォン+異音検知AI 歯車の欠け・軸受の剥離
油中粒子+劣化モデル オンライン粒子カウンター+劣化予測 ギアボックスの摩耗進行・油圧系の汚染

3. 現場実態:予知保全への注目が高まる理由

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年12月実施、n=500)によると、部長層の56.2%が予知保全をTop3の設備投資優先項目に挙げた一方、社長層では22.9%にとどまりました。日々の停止ロスを体感している中間管理職ほど、予知保全による根本的な問題解決を求めている実態があります。

同調査では、保全担当が10人未満の工場で保全担当者の50歳以上が平均81.2%を占め、大企業(30.9%)と比較して著しく高い割合でした。ベテランの暗黙知に頼った保全では、退職とともに診断能力が失われるリスクがあります。予知保全はこうした技術伝承の課題をデジタルで補完する手段でもあります。

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、工数管理が不明確な工場では突発停止への対策が「なし」と回答した割合が26.1%に上り、工数を80%以上把握している工場(4.2%)の6倍以上でした。予知保全の導入以前に、突発停止への対策自体が存在しない工場が一定数存在することを示しています。

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4. 予知保全のメリットとデメリット

項目 メリット デメリット・留意点
停止リスク 故障の数時間〜数日前に予測できれば、計画外停止をほぼゼロにできる 予測モデルの精度不足で見逃し・誤検知が発生する
保全コスト 部品の余寿命を最大限活用でき、過剰保全を排除できる センサー・AI・クラウド等の初期投資・運用コストが高い
品質 設備状態の安定化により、製品品質のばらつきを低減できる 精度の高いモデル構築には大量の学習データが必要
人材 ベテランの診断能力をデジタル化し、技術伝承の課題を補完できる データ分析・AIモデル管理のスキルを持つ人材が必要
スケール 多数の設備を同時にリモート監視できる センサー設置できない設備や故障モードには適用不可

5. 中小製造業が段階的に導入するための手順

中小製造業が最初からフルスペックの予知保全を導入しようとすると、コストと人材要件でつまずくケースが多くあります。段階的なアプローチを推奨します。

フェーズ 取り組み内容 必要な投資水準
Phase 1:データ基盤の整備 故障記録・MTBF・点検計測値をデジタルで収集・蓄積する(保全管理システムの導入) 低(月額サブスクリプション型)
Phase 2:手計測CBMの実施 振動計・温度計で重要設備の計測値を定期記録し、トレンドの変化を監視する 低〜中(計測機器+記録管理)
Phase 3:常時監視センサーの導入 最重要設備にIoTセンサーを設置し、24時間連続で計測データを取得する 中(センサー+クラウド)
Phase 4:AIによる故障予測モデルの構築 蓄積データを機械学習で学習させ、故障確率・残存寿命を予測する 高(AI開発・外部専門家)

多くの中小製造業にとって、まずPhase 1〜2(データ基盤整備+手計測CBM)を徹底することが予知保全への実践的な第一歩です。予防保全の基本的な導入ステップについては予防保全とは?TBM・CBMの種類・メリット・導入ステップを解説も合わせてご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 予知保全を外部サービスで始めることはできますか?

可能です。センサー設置からAI解析・異常通知までをパッケージで提供するPdMサービスが増えており、初期投資を抑えてスタートできます。ただし、対象設備ごとにサービスの対応可否・コストが異なるため、事前に見積もりと実績確認が必要です。

Q2. 予知保全に必要なデータ量はどれくらいですか?

機械学習モデルの構築には、正常時と故障前の計測データが両方必要です。設備によって異なりますが、数百〜数千時間分の正常データと、複数の故障事例データが目安となります。データが少ない場合は物理モデル(設備工学の知識)を組み合わせたアプローチが有効です。

Q3. 予知保全の費用対効果はどう評価すれば良いですか?

①突発故障1件あたりの損失(修繕費+生産ロス)× ②削減できる故障件数 から投資回収を試算します。1時間の停止損失が100万円の基幹ラインなら、年2〜3件の突発停止回避で数百万円のROIが期待できます。停止損失の定量化には、先にダウンタイムの記録・集計の仕組みを整えることが必要です。

Q4. 予知保全は既存設備(レガシー設備)にも使えますか?

使えます。通信機能を持たない既存設備でも、外付けセンサー(クランプ式電流計・加速度センサー)と通信モジュールを取り付けることでIoT化が可能です。設備を止めずにセンサーを後付けできる「レトロフィット型」のPdMソリューションが増えています。

Q5. 予知保全の担当者に必要なスキルは何ですか?

Phase 1〜2では、故障記録の入力・計測値の読み取り・トレンドグラフの解釈ができれば十分です。Phase 3以降では、センサーデータの基本的な理解・統計的な外れ値の判断・外部ベンダーとの技術的なコミュニケーション能力が必要になります。データサイエンティストが社内に必要になるのは、Phase 4の本格的なAIモデル構築段階です。

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