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設備点検とは?製造業でのチェックリスト作成と運用方法

設備点検とは?製造業でのチェックリスト作成と運用方法

設備点検とは、製造設備の異常・劣化を早期に発見し、突発停止や品質不良を未然に防ぐための定期的な確認活動です。日常点検・定期点検・精密点検の3層構造で実施され、設備保全の基盤となります。本記事では設備点検の種類・チェックリストの作成方法・運用定着のポイントを解説します。

1. 設備点検の目的と位置づけ

設備点検の最大の目的は、設備の劣化を「見える化」して計画的に対処することです。点検なしに運転を続けると、小さな劣化が蓄積して突発停止や重大故障につながります。製造業において突発停止は生産ラインの停止・品質不良・納期遅延を引き起こし、コスト損失だけでなく顧客信頼の喪失にもつながります。

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、専用の保全管理システムを利用している工場においても、「定期点検の未実施」が突発停止の原因として挙がった割合は37.3%に達しました。計画を立てても実施が管理できていないことが、多くの製造現場に共通する課題です。

設備点検の目的 具体的な効果
劣化の早期発見 異常音・振動・温度上昇などの兆候を捉え、重大故障に至る前に対処できる
突発停止の予防 計画的な部品交換・整備により、生産計画に影響する停止を最小化できる
設備寿命の延長 適切な清掃・給油・増締めにより、設備の正常状態を長期間維持できる
品質安定化 加工精度に影響する劣化(ガタ・摩耗)を早期に発見し、品質不良を防止できる
保全コストの平準化 高額な緊急修理・突発対応費用を削減し、予測可能な計画コストに転換できる

2. 設備点検の4種類と実施頻度

設備点検は実施者・頻度・深度によって4種類に分類されます。それぞれの役割を理解した上で、自社の保全体制に適した組み合わせを設計することが重要です。

点検種別 実施者 頻度 主な内容 目的
日常点検 オペレーター 始業前・終業後(毎日) 外観確認・異常音・振動・温度・油量・エア圧など感覚点検 運転中の異常を即時発見し、当日の生産への影響を防ぐ
定期点検 保全担当者 週次・月次・四半期 測定器具を用いた精度確認・消耗品の点検・ボルトのトルク確認・注油 劣化傾向を定期的に記録し、交換・整備時期を計画する
精密点検 保全担当者または外部専門家 年次・設備仕様に準拠 分解点検・軸受の摩耗測定・電気絶縁測定・設備精度確認 定期点検では発見しにくい内部劣化を把握し、オーバーホール計画に反映する
法定点検 有資格者・専門業者 法令で規定された周期 クレーン・プレス・ボイラーなど特定設備の法定検査 労働安全衛生法・消防法などの法令遵守と事故防止

3. 設備点検が形骸化する3つのパターン

設備点検を導入しても、実際に機能していないケースが多数あります。主なパターンは以下の3つです。

パターン①:「とりあえずチェック」による形骸化

チェックリストに項目を並べても、点検基準(判断基準値)が明確でない場合、オペレーターは「異常なし」をデフォルトで記入します。点検の目的は「記録すること」ではなく「異常を検出すること」であり、何が正常で何が異常かを数値・状態で明示する必要があります。

パターン②:点検した後の処置ルートがない

異常を発見しても、誰に報告し、どう対処するかのルートが決まっていないと、発見した異常が放置されます。チェックリストには「異常発見時の対処手順(連絡先・応急処置の可否・記録方法)」をセットで定義しておく必要があります。

パターン③:点検工数の見えない工場で対策が立てられない

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、保全工数が把握できていない工場では、突発停止への対策が「ない」と回答した割合が26.1%に達しました(保全工数を80%以上把握できている工場では4.2%)。点検活動の工数を可視化できていない工場は、改善の優先順位がつけられず、点検の合理化も進まない傾向があります。

4. 設備点検チェックリストの作成手順

点検チェックリストは「何を・誰が・いつ・どう判断するか」を一枚に集約した実務ツールです。以下の5ステップで作成します。

Step 1:点検対象設備の洗い出し

工場内の全設備をリストアップし、生産への影響度(停止時の損失の大きさ)・故障頻度・保全難易度でABC分類を行います。A設備(重要度高)は日常点検+定期点検の両方を設計し、C設備(重要度低)は事後保全(壊れてから修理)を選択することも合理的な判断です。

Step 2:点検項目の設定

各設備の故障モード(どのような劣化が起きるか)を起点に、点検項目を設定します。一般的な機械設備における点検項目例を以下に示します。

点検カテゴリ 点検項目例 判断基準例
機械系 異常音・異常振動・発熱・ガタ・摩耗 通常時と比べ明らかな異音や振動増大がないこと
油脂・潤滑系 油量・油の色・油漏れ・給脂状態 油量が上限・下限ラインの中間以上。油色が正常(黒変・白濁なし)
電気・制御系 配線の損傷・端子の緩み・インジケータの正常点灯 配線被覆に損傷なし。ランプ類が仕様通りに点灯
空圧・油圧系 エア圧・油圧・漏れ・フィルター詰まり 設定圧力値±5%以内。目視で漏れがないこと
外観・清掃 切粉・異物の堆積・カバーの破損・安全装置の動作 切粉の堆積なし。非常停止ボタンが正常に動作すること

Step 3:点検周期の決定

点検周期は設備の稼働時間・劣化速度・過去の故障履歴を基に設定します。初期設計では「メーカー推奨周期」を基準に、自社の稼働環境(稼働時間・負荷・環境温度)に応じて短縮・延長を検討します。運用開始後に故障データを蓄積し、周期を最適化します。

Step 4:担当者の明確化

各点検項目に対して「誰が実施するか(オペレーター or 保全担当者 or 外部業者)」「実施に必要なスキル・資格」を明記します。スキルが不足している点検を無理にオペレーターに委ねると、点検の質が低下し見落としが増えます。

Step 5:異常発見時の対処フロー

チェックリストに「異常発見時の対処手順」を付記します。

異常レベル 対処方法 記録方法
軽微(要監視) 次回点検まで継続監視。点検記録に「要注意」を記載 点検シートの備考欄に記録
中程度(要処置) 保全担当者に報告し、計画的に処置時期を決める 異常報告書を起票。保全記録に登録
重大(即時停止) 設備を停止し、上長と保全担当者に即時連絡。安全確保後に応急処置 故障報告書を起票。停止時間・復旧時間を記録

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5. 点検チェックリストの運用を定着させる5つのポイント

ポイント①:点検時間を「作業工程」として組み込む

点検を「業務の合間にやること」として扱うと、生産優先の現場では必ず後回しにされます。始業前点検を5分・終業後点検を3分と設定し、標準作業時間に含めることで点検が義務化されます。

ポイント②:チェックリストを「1枚・現場掲示」にする

点検シートは設備ごとに1枚にまとめ、設備に貼付またはホルダーに挿入して現場に置きます。事務所に保管するだけでは点検時に参照されず、形骸化します。

ポイント③:点検結果のフィードバックサイクルを作る

点検で異常を発見し報告したのに何も対処されなかった経験が続くと、オペレーターは「点検しても意味がない」と感じます。異常報告後の対処状況を点検者にフィードバックする仕組みが、点検モチベーションを維持します。

ポイント④:点検項目は「削ぎ落とし」を定期的に行う

点検項目は時間とともに増える傾向があります。定期的に「この項目で過去に異常を発見したか」「この項目は本当に必要か」を見直し、不要な項目を削除します。点検が重くなるほど実施率が下がります。

ポイント⑤:台数が増えたら点検コスト最適化を見直す

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、設備台数が11〜100台の工場では、設備点検の体系化が「点検コストの最適化に役立つ」と回答した割合が73.6%に達しました(対象設備なしの工場では25.0%)。設備台数が増えるほど、点検設計の合理化がコストに直結します。ABC分類による点検頻度の差別化・日常点検のオペレーター委譲・専用システムによる漏れ防止が有効です。

6. 法定点検の対象と管理のポイント

製造業では、労働安全衛生法・電気事業法・消防法などに基づく法定点検が義務づけられています。法定点検を未実施の場合、行政処分・罰則の対象になるだけでなく、重大事故が発生した際の法的責任を問われるリスクがあります。

対象設備 根拠法令 点検周期(主なもの) 実施者要件
クレーン・ホイスト 労働安全衛生法 1年以内ごとに1回(定期自主検査)/ 1ヵ月以内ごとに1回 クレーン等安全規則に基づく資格者
プレス機械 労働安全衛生法 1年以内ごとに1回(定期自主検査) プレス機械作業主任者
フォークリフト 労働安全衛生法 1年以内ごとに1回 / 1ヵ月以内ごとに1回 特定自主検査業者または社内有資格者
ボイラー 労働安全衛生法 1年以内ごとに1回(性能検査) 登録検査機関による検査
電気設備(低圧) 電気事業法 1年以内ごとに1回 電気主任技術者または委託先

法定点検の管理は設備台帳と連携させ、次回実施予定日を管理することが重要です。法定点検の期限管理を設備台帳や保全管理システムで一元化することで、実施漏れを防止できます。

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 設備点検とメンテナンス(保守)は何が違いますか?

設備点検は「異常を発見する活動」であり、メンテナンス(保守)は「発見した異常や予測される劣化に対して処置する活動」です。点検→異常発見→処置というサイクルが設備保全の基本です。点検がなければ処置のタイミングを逃し、突発停止につながります。

Q2. 点検チェックリストはどれくらいの項目数が適切ですか?

日常点検は「5〜10分で完了できる項目数」が目安です。設備1台あたり10〜15項目程度が現実的な上限です。項目数が多すぎると点検が形骸化するため、重要度の低い項目は定期点検(保全担当者実施)に移すことを推奨します。

Q3. 点検記録はどれくらいの期間保管する必要がありますか?

法定点検の記録は法令で3年間の保存が義務づけられているものがあります(クレーンの定期自主検査記録など)。自社の任意点検記録については法的義務はありませんが、故障分析・保全計画の改善に活用するために、少なくとも3年以上の保管を推奨します。電子化すれば保管場所・検索の手間を大幅に削減できます。

Q4. オペレーターが点検をサボる場合、どう対処すればよいですか?

「サボる」原因の多くは、点検項目が多すぎる・判断基準が不明確・発見した異常が放置される、のいずれかです。まず点検シートを「5分で完了できる量」に削ぎ落とし、異常発見→対処→フィードバックのサイクルを機能させることで、点検の意義をオペレーターが体感できる環境を作ることが先決です。

Q5. 外注設備や借用設備も点検対象にする必要がありますか?

外注設備・リース設備であっても、自社工場内で使用している場合は、労働安全衛生法上の義務は自社(使用者)が負います。外観点検・日常点検は自社で実施し、定期自主検査や法定点検については契約上の責任分担を確認した上で対処します。

Q6. 設備点検の結果はどのように記録・管理すればよいですか?

紙の点検シートは保管・集計・検索に手間がかかります。電子化(ExcelまたはCMMSなどの保全管理システム)により、点検結果の蓄積・故障との相関分析・点検漏れのアラート機能を活用できます。最初はExcelで始め、台数・担当者が増えた段階でシステム移行を検討する段階的アプローチが現実的です。

8. まとめ

設備点検は、突発停止と高額な緊急修理コストを防ぐ設備保全の基盤活動です。点検の種類(日常・定期・精密・法定)を整理し、設備の重要度に応じた点検設計・明確な判断基準・異常発見時の処置フローを組み合わせることで、形骸化のない点検体制を構築できます。

点検チェックリストは「作ること」が目的ではなく、「点検が実施され、異常が処置されること」が目的です。5分で完了できる日常点検シート・保全担当者が実施する月次定期点検・年次精密点検の3層構造を自社の実態に合わせて設計し、運用の定着を図ってください。

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