保全担当者の役割とは、製造設備の安定稼働を維持するために、日常点検・修理対応・予防保全の計画と実施・保全記録の管理・外注業者との調整を担う工場内の重要な機能です。保全担当者は「設備が止まった時に直す人」という事後対応の役割にとどまらず、「設備が止まらないように予防する人」という予防保全の実践者として機能することが理想的な姿です。本記事では保全担当者の具体的な業務範囲・スキル・日常業務の進め方を解説します。
1. 保全担当者の業務範囲と役割一覧
| 業務カテゴリ | 具体的な業務内容 | 重要度・頻度 |
|---|---|---|
| 日常点検・巡回 | 始業前・終業後の設備巡回・異音・振動・温度・油量の確認・チェックリスト記録 | 最重要・毎日 |
| 突発修理対応 | 停止設備の現場確認・原因特定・修理実施または外注手配・生産担当への連絡 | 最重要・突発 |
| 計画保全の実施 | 定期点検・消耗品交換・部品の定期交換・オーバーホールの計画実施 | 重要・月次〜年次 |
| 保全記録の管理 | 修理内容・使用部品・作業時間の記録・CMMSへの入力・月次報告の作成 | 重要・毎回 |
| 部品在庫の管理 | 消耗品・スペアパーツの在庫確認・発注・入庫管理・台帳の更新 | 重要・週次〜月次 |
| 外注業者の管理 | 外注先への発注・現場への立ち会い・作業品質確認・請求書の確認 | 重要・随時 |
| 改善活動 | 故障原因分析・再発防止策の立案・水平展開・KPIのモニタリング | 重要・月次 |
2. 保全担当者に必要なスキルと知識
| スキル領域 | 具体的な内容 | 習得方法 |
|---|---|---|
| 機械系の基礎知識 | 軸受・ベルト・シール・歯車・ポンプ・モーターの構造・劣化メカニズム・交換手順 | OJT・メーカー研修・技術書籍・設備資格(機械保全技能士) |
| 電気系の基礎知識 | 電気回路の基礎・インバーター・センサー・PLCの基本動作・電気系トラブルの判断 | OJT・電気工事士資格・メーカー研修 |
| 点検・測定技術 | 振動測定・温度測定・絶縁抵抗測定・トルク管理・寸法測定の実施方法 | OJT・測定機器メーカーの講習・技能士資格 |
| 記録・分析スキル | 停止記録の記述・なぜなぜ分析・MTBF/MTTRの計算・月次保全レポートの作成 | 業務の実践・上司・先輩からの指導・社内研修 |
| マネジメント・調整力 | 外注業者との交渉・生産部門との調整・保全計画の説明・コスト管理 | 業務経験の蓄積・マネジメント研修 |
3. 保全担当者の1ヶ月の標準業務サイクル
【毎日】日常点検と突発対応
始業時の設備巡回点検(チェックリストに沿って異常の有無を確認)と、日中の突発対応(停止発生時の現場確認・原因特定・対応)が毎日の主業務です。点検で異常が見つかった場合は「即対応か・計画修理に組み込むか・経過観察か」を判断し、記録します。
【週次・月次】計画保全の実施と記録整理
月次・週次の点検スケジュールに従って計画点検・消耗品交換を実施します。部品在庫の確認・発注は週次で行い、欠品による修理遅延を防ぎます。月次では保全記録の集計(突発停止件数・停止時間・修理コスト・点検実施率)を行い、月次保全報告にまとめます。
【月次・四半期】分析と改善活動
月次データを分析して「最も問題の大きい設備・最頻繁な故障原因」を特定し、改善策を検討します。なぜなぜ分析で根本原因を特定し、再発防止策(点検頻度の変更・部品交換周期の見直し・手順書の更新)を実施します。改善の効果は3〜6ヶ月後のKPI変化で確認します。
4. 現場実態:保全担当者の配置と業務の実情
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、保全担当者が明確でない工場(工数不明層)で突発停止に「対策なし」と回答した割合は26.1%に達する一方、保全担当者が明確な工場では4.2%にとどまります。「誰が保全を担当するか」を明確にするだけで、突発停止への対策実施率に約6倍の差が生まれます。
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年5月実施、n=500)によると、設備保全管理システムの非利用層で保全工数を「わからない」と回答した割合は33.2%に達します。保全担当者が実際にどれだけの時間・工数を保全業務に費やしているかを把握できていない工場では、適正な人員配置・保全投資の判断ができません。
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年12月実施、n=500)によると、従業員10人未満の工場では社長・経営者が保全担当者を兼ねているケースで保全人員が1〜5人の割合が67.4%に達します。極小規模の保全体制では、保全担当者の役割が「何でも屋」になりやすく、計画保全・改善活動に時間を割けない構造的な問題が生じています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 保全担当者と生産担当者の役割はどう分ければいいですか?
基本的な役割分担は「日常点検・清掃・給油・簡易消耗品交換=オペレーター(生産担当)が実施」「修理・大きな部品交換・計画保全の実施・外注管理=保全担当者が実施」です。オペレーターが自主保全として点検・清掃を担当することで、保全担当者は予防保全・改善活動に集中できます。境界は「どこまでオペレーターが対応してOKか」を明文化し、教育・認定することが重要です。
Q2. 保全担当者が1人しかいない場合、何を優先すればいいですか?
1人の場合の優先順位は①安全に関わる点検・法定検査の実施(義務・事故防止)②ボトルネック設備の予防保全(停止すると生産全体が止まる)③突発修理への対応(発生したら最優先で対応)④記録の最低限の維持(後の分析に必要)⑤それ以外は外注・オペレーター委譲・実施見送りを検討する、という順序です。「全部やろうとしない」ことが1人保全体制の鉄則です。
Q3. 保全担当者として最初に取得すべき資格は?
最も汎用的な入門資格は「機械保全技能士(国家資格)」です。3級から受験でき、機械系・電気系の基礎知識を体系的に習得できます。電気系の保全を担当する場合は「第二種電気工事士」も取得が推奨されます。業種・設備によっては「クレーン運転士・ボイラー技士・高圧ガス製造保安責任者」等の資格が法令上必要になります。自社設備に必要な法定資格を優先し、次に技術向上のための任意資格を計画します。
Q4. 保全記録はどのように書けばいいですか?
保全記録に最低限記載すべき項目は①日時(発生日時・対応完了日時)②設備名・設備番号③現象(どんな症状が出たか・停止状況)④原因(直接原因・根本原因)⑤対応内容(実施した作業・交換した部品・外注先名)⑥対応工数(時間)⑦次回の対応予定(部品発注・次回点検の予定)の7項目です。記録の目的は「次の人が同じ状況に直面したときに迷わず対応できる情報を残すこと」であり、後から自分が読んでも分かる内容を意識します。
Q5. 保全担当者としてのキャリアアップはどうすればいいですか?
保全担当者のキャリアパスは①技術の深化(特定設備・技術領域のエキスパート)②範囲の拡大(複数設備・工場全体の保全責任者)③管理職(保全チームのリーダー・保全部門長)④専門職への転換(生産技術・設備管理・品質保証)の4方向があります。スキルアップには①資格取得(機械保全技能士・電気工事士等)②メーカー・外注業者の技術研修への参加③改善提案・再発防止の実績づくりが有効です。
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