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保全KPIの設計方法:停止率・MTBF・計画保全比率の使い方

保全KPIの設計方法:停止率・MTBF・計画保全比率の使い方

保全KPIとは、設備保全活動の成果・効率・品質を数値で評価するための管理指標です。適切な保全KPIを設定することで、保全活動の改善優先順位が明確になり、設備停止の削減・保全コストの最適化を定量的に管理できます。本記事では保全KPIの種類・選定方法・目標値の設定手順を設備保全の実務視点から解説します。

1. 保全KPIが必要な理由:「損失が見えない」工場の実態

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、保全工数が把握できていない工場では「設備停止による損失を把握できていない」と回答した割合が93.6%に達しました(保全工数を80%以上把握できている工場では18.3%)。損失が可視化されていなければ、保全への投資を経営に説明することができず、改善の優先順位も立てられません。

同調査では、専用の保全管理システム(CMMS)を利用している工場では損失を「詳細に把握している」割合が45.3%であるのに対し、紙・未導入工場では4.3%にとどまりました。保全KPIを測定するインフラ(記録・集計の仕組み)の有無が、損失把握の精度を大きく左右しています。

保全KPIがない場合のリスク 具体的な問題
改善効果が検証できない 保全活動を変えても「改善したかどうか」がわからず、PDCAが回らない
投資判断の根拠がない 保全費や設備更新への投資を経営層に提案する際の数値根拠がない
保全活動の優先順位がつかない すべての設備を同等に管理しようとして、重要設備への対応が遅れる
目標が共有できない 保全担当者ごとに「良い保全」の基準がバラバラで、属人的な判断が続く

2. 保全KPIの7つの主要指標

保全KPIは「設備の信頼性・保全の効率性・コスト」の3カテゴリで構成されます。最初からすべてを測定しようとせず、自社の保全課題に直結する2〜3指標から始めることを推奨します。

カテゴリ①:設備の信頼性指標

指標 計算式 何を測るか
MTBF(平均故障間隔) 稼働時間合計 ÷ 故障件数 故障から次の故障までの平均間隔。長いほど設備が安定して稼働できている
突発停止率(計画外停止率) (突発停止時間 ÷ 稼働時間)× 100 全稼働時間のうち突発停止が占める割合。低いほど計画保全が機能している
設備稼働率 (実稼働時間 ÷ 計画稼働時間)× 100 計画した稼働時間に対して実際に稼働できた割合。停止ロス全体を捉える

カテゴリ②:保全効率指標

指標 計算式 何を測るか
MTTR(平均修理時間) 修理時間合計 ÷ 故障件数 故障発生から復旧完了までの平均時間。短いほど復旧が速い
計画保全実施率 (実施件数 ÷ 計画件数)× 100 計画した保全作業が実際に実施された割合。計画保全の実行力を測る
計画保全比率 (計画保全工数 ÷ 総保全工数)× 100 保全工数のうち計画的な保全が占める割合。高いほど突発対応が少ない

カテゴリ③:コスト指標

指標 計算式 何を測るか
保全費比率 (保全費 ÷ 生産高)× 100 生産に対して保全にかかるコストの割合。業種平均と比較して多寡を評価する

3. 保全KPIの選定方法:課題から逆算する

保全KPIを選ぶ際は「今、自社の保全の何が問題か」から逆算します。課題と適切な指標の対応関係を以下に整理します。

保全の課題・症状 適切な保全KPI 測定の目的
突発停止が多い MTBF・突発停止率 停止頻度と傾向を設備別に把握し、重点対象設備を特定する
修理に時間がかかる MTTR 復旧の遅延要因(部品待ち・図面探し・手順不明)を特定する
計画した保全が実施できていない 計画保全実施率 未実施の原因(人員不足・生産優先・資材不足)を把握する
突発対応に追われて計画保全の時間がない 計画保全比率 突発比率の推移を月次でモニタリングし、改善効果を可視化する
保全費がどんどん増えている 保全費比率 費用の内訳(修理費・外注費・部品費)を分解して削減対象を特定する

保全KPIが機能している工場・していない工場の実態データ

「製造設備の突発停止」調査レポート(n=500)では、指標を測定している工場と測定していない工場の損失把握精度・改善効果の差を詳報。保全KPI導入の根拠としてご活用ください。

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4. 保全KPIの目標値の設定方法

保全KPIの目標値は「業界標準との比較」と「自社の過去実績からの改善率」の2つのアプローチで設定します。

アプローチ①:業界標準値を参考にする

指標 製造業の一般的な参考値 備考
計画保全比率 70〜80%以上 突発対応が30%以下に収まっている状態が理想
計画保全実施率 90%以上 計画した保全の9割が実施されていることが基準
設備稼働率 85〜95%(設備種類による) ボトルネック設備は95%以上を目標とすることが多い
MTTR(一般的な機械設備) 2〜4時間以内 設備の複雑さ・修理方法・部品調達環境による
保全費比率 製造原価の2〜4% 業種・設備種類・設備経年によって大きく異なる

アプローチ②:自社実績からの改善目標を設定する

過去12ヵ月の実績値を基準として、改善率(10〜20%改善)を目標に設定する方法です。例えば、前年のMTBFが平均200時間であれば、今年の目標を240時間(20%改善)とします。改善率は保全活動の強化度合いと現場の実力を考慮して設定します。

八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、管理設備台数が101〜500台の工場では「改善サイクルをもっと早くしたい」と回答した割合が58.1%に達しました(管理設備なしの工場では8.3%)。設備台数が増えるほど改善サイクルの遅延による損失が大きくなるため、KPIによる月次モニタリングの必要性が高まります。

5. 保全KPIの測定インフラを整える

保全KPIを測定するためには、以下のデータが記録・蓄積されている必要があります。まず記録の仕組みを整えてから指標の測定を始めます。

KPI 測定に必要なデータ 記録の仕組み
MTBF・突発停止率 故障発生日時・設備ID・稼働時間 故障報告書または保全管理システムへの即時記録
MTTR 故障発生時刻・復旧完了時刻・修理内容 故障報告書に「停止時刻・復旧時刻」欄を設ける
計画保全実施率 計画件数・実施件数・未実施理由 月次保全計画と実施記録の照合(Excelまたはシステム)
計画保全比率 計画保全工数・突発対応工数・総保全工数 日報・作業報告書での工数区分記録
保全費比率 修理費・外注費・部品費・生産高 経理システムとの連携または月次集計

6. 保全KPIをレビューする仕組み

保全KPIは測定するだけでなく、定期的にレビューして改善アクションに結びつけることで機能します。推奨するレビューサイクルは以下のとおりです。

頻度 レビュー内容 参加者
週次 当週の故障件数・突発停止時間の確認。異常値があれば即時対応策を検討 保全担当者・班長
月次 月間KPIの実績vs目標の確認。計画保全実施率・突発停止率の推移グラフ確認。未実施理由の分析と翌月の対策立案 保全管理者・工場長
四半期・年次 KPIの年間トレンド分析。目標値の見直し。保全計画の改善。保全費の予実分析と翌年度予算策定 保全管理者・経営層

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 保全KPIはいくつ設定すればよいですか?

最初は2〜3指標に絞ることを推奨します。多すぎると測定・集計の工数が増えて継続できなくなります。まずMTBFと計画保全実施率の2指標から始め、測定が定着したら追加することが現実的です。

Q2. 保全KPIの目標値はどうやって決めればよいですか?

自社の過去12ヵ月の実績値を計測し、10〜20%改善を初期目標として設定します。実績データがない場合は、業界標準値(計画保全比率70%以上、計画保全実施率90%以上など)を目標値として参考にします。

Q3. 小規模工場でも保全KPIは必要ですか?

設備台数が少なくても、保全担当者が1〜2名であれば、突発停止件数・MTTR・計画保全実施率の3指標だけで十分機能します。重要なのは「記録→集計→レビュー」のサイクルを仕組みとして持つことであり、工場規模に関わりません。

Q4. 保全KPIをExcelで管理することは可能ですか?

可能です。故障報告書のExcel集計・月次保全計画との実績比較であれば、Excelで十分対応できます。ただし、集計が月次でしか行えない・リアルタイムの状況把握ができない・入力漏れのアラートがない、という限界があります。設備台数・担当者数が増えてきたら保全管理システムへの移行を検討してください。

Q5. 保全KPIを経営層に報告する際のポイントは何ですか?

経営層が注目するのは「損失額」と「投資対効果」です。突発停止率・保全費比率を生産高に対する影響額(円)に換算して報告することで、数値の意味が伝わりやすくなります。「突発停止率を1%下げると年間〇〇万円の損失削減になる」という形が有効です。

8. まとめ

保全KPIは、保全活動の成果を数値で評価し、改善の方向性を明確にするための必須ツールです。まず「自社の保全課題は何か」から適切な指標を2〜3つ選定し、記録の仕組みを整えて測定を始めてください。

重要なのは「測定すること」よりも「測定した数値を月次でレビューして改善アクションに結びつけること」です。保全KPIがない工場は損失が見えないまま突発対応を繰り返し、保全費が増え続ける悪循環に陥ります。KPIによる月次モニタリングを保全管理の基盤として整備してください。

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