品質コスト(COPQ)とは:定義と4つの分類
品質コスト(Cost of Poor Quality:COPQ、または品質の悪さのコスト)とは、製品・サービスが要求品質を満たさないことによって発生するすべてのコストを指します。広義には「品質を確保するために投じるコスト」と「品質不良によって発生するコスト」の合計であり、一般的に予防コスト・評価コスト・内部失敗コスト・外部失敗コストの4つに分類されます。
品質コストは製造業の売上高の5〜30%に相当するとも言われており、多くの工場では「見えているコスト(不良品廃棄・手直し費)」の背後に「見えていないコスト(クレーム対応・機会損失・顧客信頼低下)」が大きく潜在しています。品質コストを構造的に把握することで、品質改善への投資対効果を定量化し、改善の優先順位を合理的に設計できます。
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年5月実施、n=500)によると、製造業の品質管理担当者のうち「品質コストを定期的に算定している」と回答した割合は全体の18.6%にとどまり、不良率・クレーム件数は管理していても品質コストとして金額換算している工場は少数であることが示されています。
品質コストの4分類
| 分類 | 定義 | 主な内訳 |
|---|---|---|
| 予防コスト | 不良を未然に防ぐための費用 | 品質教育・工程設計・FMEA・標準書整備・供給者管理 |
| 評価コスト | 品質を確認・検査するための費用 | 受入検査・工程検査・出荷検査・測定器校正・試験費 |
| 内部失敗コスト | 出荷前に発見された不良による費用 | 廃棄・手直し・再加工・スクラップ・設備ダウン対応 |
| 外部失敗コスト | 出荷後に発覚した不良による費用 | クレーム対応・返品・リコール・保証費・顧客信頼低下 |
品質コストの算定方法
Step1:品質コストの収集科目を定義する
まず自社の費用科目から品質コストに該当する項目を特定します。内部失敗コストは「廃棄材料費・手直し工数・スクラップ費」、外部失敗コストは「クレーム対応工数・保証費・返品処理費」として、勘定科目または工数記録から抽出できます。評価コストは「検査員人件費・測定器コスト・外注検査費」、予防コストは「品質教育費・品質管理システム費」として集計します。すべての科目を一度に整備する必要はなく、データ入手しやすい科目から段階的に追加します。
Step2:現状の品質コストを算定・構造化する
収集したデータを4分類に整理し、合計額と売上高比を算出します。一般的に最適な品質コスト構成は「予防コストを増やすことで内部・外部失敗コストが減少し、総品質コストが低下する」という構造です。現状の品質コストが失敗コスト偏重(予防・評価が少なく、失敗コストが大きい)であれば、予防的な品質投資の費用対効果が高いことを示します。
Step3:削減の優先順位を設定する
外部失敗コスト(クレーム・返品)は顧客信頼への影響が最大であり、削減優先度が最も高いカテゴリです。次に内部失敗コスト(廃棄・手直し)の削減に取り組みます。予防コストへの投資(FMEA・工程設計改善・教育)は内部・外部失敗コストの削減に乗数的に効く施策であり、ROIを試算したうえで優先投資する対象として設計します。
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年12月実施、n=500)によると、品質コストの削減に取り組んでいる製造業のうち「外部失敗コスト(クレーム・保証費)の削減を最重点課題としている」割合が最多(52.1%)であり、「内部失敗コスト(廃棄・手直し)」が38.6%で続いていることが示されています。
品質コスト削減の実践ポイント
品質コストの削減において最も費用対効果が高いのは、工程内での不良の早期検出です。工程終末での全数検査より、工程内での自工程完結(後工程に不良を流さない仕組み)が内部失敗コストの大幅な削減につながります。ポカヨケ(エラープルーフ)や工程FMEAによる潜在不良モードの特定・対策は、予防コストの典型的な投資対象です。また、外部失敗コストは「金銭的なクレーム費用」だけでなく、対応工数・機会損失・顧客離れを含めた全コストを可視化することで、予防コストへの投資の正当性を経営層に説明しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 品質コストの目標水準はありますか?
業種・規模によって異なりますが、製造業の品質コストは売上高の5〜10%が平均的な水準とされています。世界クラスの品質管理水準を達成している企業では2〜3%以下のケースもあります。自社の現状を算定し、前年比での改善率を管理指標とすることが実践的です。
Q2. 品質コストとOEEはどう関係しますか?
OEE(設備総合効率)の品質ロスは内部失敗コストに直結します。不良品・手直し品の比率が高いほどOEEの品質要因が低下し、材料費・加工費の無駄が発生します。OEE改善と品質コスト削減は同じ改善テーマを異なる指標で見ているとも言え、両方を組み合わせた改善活動が効果的です。
Q3. 品質コストの算定に専用システムは必要ですか?
必須ではありません。最初はExcelで主要科目(廃棄費・手直し工数・クレーム対応費)を月次集計することから始めることが現実的です。生産管理システムや会計システムからのデータ抽出ができれば、自動化・精度向上が可能ですが、まず「算定する習慣」を作ることが優先です。
Q4. 隠れた品質コストとは何ですか?
見えやすい品質コスト(廃棄費・クレーム費)の背後に存在する間接コストを指します。具体的には、品質問題対応のための会議時間・検査工数の増大・過剰な在庫(不良品カバー用バッファ)・エンジニアの設計変更対応工数などが該当します。これらを金額換算すると、見えているコストの3〜4倍になるケースもあります。
Q5. 品質コストをどう経営指標として活用すればよいですか?
品質コスト(売上高比)を経営会議の定期報告指標として組み込み、改善活動の投資対効果をROIで示すことが有効です。「品質改善のための予防コスト投資XXX万円→失敗コストYYY万円削減」という形で経営層への説明根拠として活用できます。品質部門のKPIとして品質コストを設定することで、品質活動の「コスト削減への貢献」を定量化できます。
まとめ:品質コストの見える化が品質改善投資の根拠になる
製造業における品質コストの算定は、改善活動の優先順位決定と経営層への投資説明の両方に機能します。まず入手しやすい失敗コスト(廃棄費・クレーム対応費)から算定を始め、予防コストとの比率を把握することで、品質への投資対効果を定量的に示せるようになります。品質コストの削減は、単なるコスト管理ではなく、顧客満足・ブランド価値・リードタイムの改善にもつながる製造業の経営基盤強化の核心です。