MTBFとは、Mean Time Between Failuresの略称で、設備が故障してから次の故障が起きるまでの平均時間(平均故障間隔)を示す信頼性指標です。数値が大きいほど、故障頻度の低い設備・システムを指します。製造現場ではMTBF計算式を使って保全計画の基準値を算出し、予防保全の点検周期設定やMTTR(平均修理時間)との比較による稼働率改善に役立てます。設備保全の全体体系については設備保全とは?種類・目的・進め方を解説も合わせてご参照ください。
1. MTBF計算式と具体例
MTBFの基本計算式は以下のとおりです。
| 計算式 | 意味 |
|---|---|
| MTBF = 総稼働時間 ÷ 故障件数 | 一定期間の稼働時間合計を、その期間内の故障件数で割った値(単位:時間) |
MTBF計算式の具体例:ある設備が1か月(720時間)で3回故障し、修理にそれぞれ2時間かかった場合
| 項目 | 値 | 算出方法 |
|---|---|---|
| 総稼働時間 | 714時間 | 720時間 − 修理時間合計(2×3=6時間) |
| 故障件数 | 3件 | 実績カウント |
| MTBF | 238時間 | 714 ÷ 3 |
この設備は平均238時間ごとに故障が発生していることを示します。製造業では月次・四半期ごとにMTBFを集計し、前期比較や設備間比較により保全課題を優先順位付けします。MTBF計算式はシンプルですが、「故障の定義を統一する」ことが集計精度を高めるうえで最も重要なステップです。
2. MTBF・MTTRの違い・MTTF・稼働率との関係
MTBFは単独ではなく、関連指標と組み合わせて設備の信頼性を評価します。MTBF MTTRの違いを正しく理解することで、稼働率向上のための施策を適切に設計できます。MTTRの詳細についてはMTTRとは?計算式・短縮方法・MTBFとの関係を解説も合わせてご参照ください。
| 指標 | 正式名称 | 意味 | 計算式 |
|---|---|---|---|
| MTBF | Mean Time Between Failures | 故障〜次の故障までの平均時間(平均故障間隔) | 総稼働時間 ÷ 故障件数 |
| MTTR | Mean Time To Repair | 故障発生〜復旧完了までの平均時間 | 総修理時間 ÷ 故障件数 |
| MTTF | Mean Time To Failure | 使用開始〜最初の故障までの平均時間 | 総稼働時間 ÷ 故障件数(修理不能品向け) |
| 稼働率 | Availability | 要求時間のうち稼働できた割合 | MTBF ÷ (MTBF+MTTR)× 100 |
稼働率の計算例(上記の設備):
MTTR = 6時間 ÷ 3件 = 2時間
稼働率 = 238 ÷ (238+2) × 100 = 99.2%
稼働率を高めるには「MTBFを伸ばす(故障を減らす)」か「MTTRを短縮する(修理を速くする)」の2方向しかありません。MTBF MTTRの違いを踏まえ、自社の現状課題がどちらにあるかを判断したうえで施策を設計することが重要です。OEEとMTBFの関係についてはOEEとは?計算式・目標値・改善方法を製造業向けに解説も参照ください。
3. 現場実態:修理時間の長期化が示す課題
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)によると、工数を80%以上把握している工場でも「修理に時間がかかる」と回答した割合が64.8%に上りました。遅延の主因として、部品待ち・図面探し・標準手順の欠如が挙げられており、MTTR短縮(修理速度の改善)が稼働率向上の最大の鍵となっています。
また、八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年5月実施、n=500)によると、40代の保全担当者の28.8%が「修理に時間がかかること」を最大の課題として挙げており、全体平均(14.2%)の約2倍に達しました。現場を熟知した中核世代ほど、MTTR短縮の必要性を強く感じている実態があります。同調査では40代担当者の42.4%がマニュアル化を求めており(全体30.8%)、標準修理手順の整備がMTTR改善の第一歩となることが示唆されています。
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)では、管理設備が101〜500台の工場で「改善サイクルを早くしたい」と回答した割合が58.1%に達し、管理対象のない工場(8.3%)の7倍以上でした。管理台数が増えるほど、MTBFデータの活用による優先保全が不可欠になります。
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2024年10月実施、n=500)では、医薬品・化粧品系製造業で稼働40年以上の設備が50.0%(全体平均20.2%)に達しており、老朽化設備の延命保全においてMTBF管理の重要性が特に高い実態があります。老朽化が進むほど故障頻度が高まりMTBFが低下するため、設備更新計画とMTBF目標を連動させた保全戦略が求められます。
4. 製造業でのMTBF活用方法
MTBFは次の3つのシーンで活用できます。予防保全との連携については予防保全とは?TBM・CBMの種類・メリット・導入ステップを解説も合わせてご参照ください。
① 予防保全の点検周期設定
MTBFが200時間の設備であれば、故障の前に点検・部品交換を行う目安として「150〜180時間ごと」に定期保全(TBM)を設定します。MTBFの70〜80%を目安とすることが多くあります。MTBF計算式を月次で更新することで、過剰保全(余寿命廃棄)と過少保全(周期が長すぎ故障発生)のバランスを継続的に最適化できます。
② 設備間の信頼性比較
同種設備が複数ある場合、MTBFを比較することで保全資源の優先配分先を決定できます。MTBFが著しく低い設備に保全リソースを集中させ、ライン全体の稼働率を底上げします。平均故障間隔の設備間比較は、限られた保全人員・予算を最も効果的に配分するための意思決定ツールとなります。
③ 改良保全(CM)の費用対効果評価
設備改良(部品グレードアップ・設計変更)の前後でMTBFを比較し、改善効果を定量的に評価します。MTBF改善による停止削減時間 × 1時間あたりの生産損失額で経済効果を算出でき、経営層への投資承認の根拠として活用できます。
5. MTBF改善のための施策
MTBF改善には、故障頻度を下げる予防的アプローチと根本原因を排除するアプローチの2軸があります。
| 施策カテゴリ | 具体的なアクション | 期待効果 |
|---|---|---|
| 予防保全の徹底 | TBM周期の最適化、消耗品の定期交換 | 摩耗・劣化起因の故障を削減 |
| 日常点検の標準化 | オペレーターによる始業前チェックリスト導入 | 軽微な異常の早期発見 |
| 故障原因分析 | 故障ごとのFMEA・なぜなぜ分析で根本原因を特定 | 同一故障の再発防止 |
| 部品・潤滑管理 | 適切なグリス給油周期の設定、消耗品の品質管理 | 摺動部・軸受の長寿命化 |
| 改良保全(CM) | 繰り返し故障設備の設計・材質改良 | 根本的な信頼性向上 |
| 運転条件の見直し | 過負荷・過速度運転の排除、設定値の適正化 | 疲労破壊・熱損傷の防止 |
6. MTBFの計測を始める4ステップ
MTBFを活用するには、まず故障記録の仕組みを整えることが前提となります。保全KPI全体の設定・管理については保全KPIとは?MTBF・OEE・計画保全実施率の設定と管理方法も参照ください。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| Step 1 | 対象設備の確定 | 全設備ではなく、主要生産設備20〜30台から開始する |
| Step 2 | 故障の定義を統一 | 「生産に影響する計画外停止」を故障とカウントするルールを決める |
| Step 3 | 故障記録の実施 | 発生日時・設備名・故障内容・復旧日時を記録する(紙でも可) |
| Step 4 | 月次でMTBFを算出・比較 | 前月比・設備間比較を行い、保全優先順位に反映する |
八千代ソリューションズ株式会社によるオンライン調査(2025年3月実施、n=500)では、保全工数を80%以上把握している工場で「記録している」割合が90.1%に達した一方、工数不明層では21.7%にとどまりました。記録習慣は役割定義の有無で決まるため、Step 2(故障定義の統一)と担当者の明確化が最初のボトルネックとなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. MTBFとMTTFの違いは何ですか?
MTBFは修理可能な設備に用いる指標で「故障〜次の故障までの平均時間(平均故障間隔)」を示します。MTTFは修理不能な部品(電球、使い捨て部品等)に用い「使用開始〜最初の故障までの平均時間」を示します。製造設備の信頼性評価にはMTBFが使われます。MTBF MTTRの違いと合わせて、3指標(MTBF・MTTR・MTTF)を一体的に理解することを推奨します。
Q2. MTBFが高ければ必ず良い設備ですか?
必ずしもそうではありません。MTBFが高くても、ひとたび故障するとMTTR(修理時間)が極めて長い設備は稼働率が低くなります。稼働率 = MTBF ÷ (MTBF+MTTR) であるため、MTBFとMTTRの両方を管理することが重要です。MTBF改善だけでなく、修理手順の標準化・部品の先行手配によるMTTR短縮も並行して取り組むことが稼働率向上の近道です。
Q3. MTBFはどの頻度で集計すれば良いですか?
月次での集計が基本です。故障件数が少ない設備は四半期・半期単位でサンプル数を確保してから算出します。故障件数が月1〜2件程度では統計的な信頼性が低くなるため、3〜6か月の移動平均で傾向を見るのが実務的です。
Q4. MTBFが突然低下した場合、何を確認すれば良いですか?
①点検・給油の実施漏れ ②消耗品の交換周期の超過 ③運転条件(負荷・回転数・温度)の変化 ④同種故障の繰り返しを確認します。同一故障が繰り返されている場合は、改良保全(CM)による根本対策が必要です。なぜなぜ分析で根本原因を特定し、MTBF改善施策を設計します。
Q5. 小規模工場でもMTBFは管理できますか?
可能です。最初は主要設備3〜5台に絞り、Excelで「故障日・復旧日・故障内容」を記録するだけでMTBF計算式を適用できます。保全管理システムを導入すると自動集計・グラフ化が可能になり、分析の手間を大幅に削減できます。
Q6. MTBFと予防保全の点検周期はどう連動させますか?
一般的にMTBFの70〜80%の時間を点検周期の目安とします。たとえばMTBFが300時間であれば、210〜240時間ごとに定期点検(TBM)を実施します。運用を継続しながらMTBFを月次で更新し、点検周期の適否を半期ごとに見直すPDCAが保全コストの最適化につながります。
Q7. MTBFデータが少ない設備(新設備・稀少故障)はどう扱いますか?
故障実績が少ない設備には、メーカーが提示する設計寿命・推奨点検周期を初期値として使用します。並行して同種設備・同業他社の業界平均MTBFを参考にします。実績データが蓄積されるにつれて統計的な精度が向上するため、最初の6〜12か月は保守的に(短めの)周期で点検を実施し、データを積み上げることが推奨されます。
Q8. MTBF改善の費用対効果はどう計算しますか?
MTBF改善効果の算出式は「(改善後のMTBF − 改善前のMTBF)÷ 改善前のMTBF × 年間停止件数 × 1件あたり停止損失額」で近似できます。たとえばMTBFが200時間から280時間に改善された場合、故障頻度は28.6%低下します。この削減件数 × 1件あたりの修繕費・生産ロスで年間経済効果を算出し、保全投資の費用対効果として経営層に提示できます。
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